2022.04.30
【もっと知りたい円谷英二ミュージアム その3】トクサツとCGの話
円谷英二ミュージアムでは、「もっと知りたい円谷英二ミュージアム」と題して、ミュージアムをより深く楽しめるような情報を発信します。
tette公式インスタグラムでも先行公開しています。フォローといいねをお待ちしています。
その3「トクサツとCGの話」
今回はトクサツとCG(コンピューターグラフィック)の組合せについて。
(ここでは、いわゆるミニチュアセットを中心とする英二監督の時代の特殊技術のことを、トクサツとしています。)
最近のCGの技術の進歩は素晴らしく、表現できないものは無いといわれるほどです。それでも、トクサツはCG映像の中で未だ健在です。
例えば、破壊された街の複雑な建物の映像の場合、CGで1からつくるより、ミニチュアで作ったものを撮影した方が早くてより良い、嘘のないものができます。ミニチュアで撮影したビルの破壊シーンはCG映像の素材になるのです。
さらに、破壊されなかった建物や模型は、また別な映画に登場させることができます。リサイクル可能なのです。
(ちなみに当ミュージアムの特別映像『ゴジラ須賀川に現る』には、2004年の『ゴジラ ファイナルウォーズ』に登場した、ゴジラの尻尾が使われています。)
そして、太陽の下、屋外の自然光で撮影された映像はCGよりずっと自然に見えるそうです。
トクサツは、沢山の人びとの仕事で成り立っています。
いくつかの組織に分かれた分業制になっており、それぞれ専門分野を担当します。
ここでは特に、美術、操演、特殊効果、照明の役割について、特撮スタジオの模型を用いてご紹介します。
まずは美術。ミニチュアセットなど、被写体のほとんどを手がけています。緻密なものから書割(平面の背景)まで、多岐に渡ります。
実際のセットでは、画面に映らない角度の部分は作られていなかったり、映画のための美術であることがよくわかります。
続いて操演。ワイヤーアクションやミニチュアの操作を担当します。
怪獣映画では、ワイヤーやロープを用いて、ゴジラの尻尾などを動かし、より生きているような動きを表現します。
特殊効果。火薬を使った爆発や、圧縮空気を用いて爆風を表現します。炎や風など、映画には欠かせない表現を担っています。
特撮スタジオでは、戦争映画の海戦で、砲弾が着弾した際の水柱を表現している様子を再現しています。
最後に照明。最もイメージしやすい技術ですが、演出の狙いを実現するため重要な技術です。
サーチライトや光線の照り返し(光線そのものは、合成で表現していますが、よりリアルに見せるためには欠かせない技術です。)など、特撮ならではの表現もあります。
このほかにも、脚本、光学合成、音響、そして特技監督など、特撮を撮るためには様々な技術と技術者が必要です。
当時、円谷英二監督が率いた技術者たちは「円谷組」と呼ばれていました。チームで撮影していたことがよくわかります。
こういった技術を意識しながら、円谷英二ミュージアムや映画を見るとより楽しめるのではないでしょうか。
須賀川市では、失われてしまう特撮技術の保存、継承を目的に「特撮アーカイブセンター」を整備しています。
有形ながら撮影が終われば破棄されてしまう美術をはじめ、次世代へ繋いでいくため取り組んでおりますので、アーカイブセンターの開館を楽しみにお待ちください。
また、円谷英二ミュージアムは図書との融合をコンセプトに、図書館機能を有しています。特撮や映画に関する技術の本も取り揃えていますので、より深堀りしたい方はこちらもどうぞ。
今回は、「トクサツ」を支える技術についてお届けしました。
次回以降も円谷英二ミュージアムの魅力をお伝えしていきます。