福島県須賀川市市民交流センター準備企画「一緒につくる、考えるワークショップ」


かえりたくなる街のつくり方 vol.05 ゼロからつくる街の映画館



ワークショップシリーズ「かえりたくなる街のつくり方 vol.05」のゲストは、福島県白河市在住で、老舗和菓子屋「大黒屋」の4代目で代表を務めながら、2016年10月23日にオープンした白河市文化交流館「コミネス」の指定管理者として運営に携わっている古川雅裕さん。古川さんに出会ったのは、3年ほど前に東京で開催されていた映画の試写会で、共通の知人で映画監督の林弘樹さんを通じて知り合いました。古川さんは、とにかくエネルギッシュでまっすぐなひとです。情熱に突き動かされて活動している、そんな印象は出会った頃と今も変わりません。


ワークショップタイトルは「ゼロからつくる街の映画館」。


“映画”を切り口に、ゲスト古川さんが活動してきた内容を伺いながら、ワークショップで生まれたアイディアを形にして、これからできる市民交流センターで実現できることを目指しました。前半は、古川さんがプロデューサーとして関わった映画「トテチータ・チキチータ」のメイキング映像や、白河で運営していた公共の文化施設に、神戸のシネコンから椅子を譲りうけて映画が観られる環境を作ったことについて、映像を交えながらお話してもらいました。




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もともと映画化が進められている中、震災が起こり、企画が潰れかけていた時に古川さんのところに相談の話が持ち込まれた作品が「トテチータ・チキチータ」。震災からまだ三ヶ月。それでも「トテチータ・チキチータ」の脚本を読んで、映画に関わろうと、古川さんの心を突き動かしたものは「故郷への想い」。


古川さんが監督に出した条件は2つ。
「今回起きた震災を無視しないでストーリーの中に、震災の福島を入れてもらいたいこと、そして福島全土で映画のロケを行って“福島の映画”を作りたいと伝えた。クランクインするまで三ヶ月もない状況の中で、映画の制作費は、仕事を受けたその日から、国、県、市、その他あらゆるところを走り回りなんとかした。とにかく、海外に向けて、福島は下なんか向いてないってことを伝えたかったし、福島の光を映画を通して伝えたかった。和菓子は千人に伝えたいと思ったら、千個作らなくちゃいけない、1万人だったら1万個。でも、映像は多くの人に伝えられるツールとして元々感じていた」と話してくれました。



映画館がない街、白河で、文化センターなどの公共施設を利用して映画を観ることができる環境を作ろうと、市民創造映画館プロジェクトとして、白河シネマパラダイス運営委員会を立ち上げた古川さん。


「10万人いかない都市で映画館を作るのは難しい。地方だから観られないっていう理不尽さが嫌だった。だから、待っていてもできないなら、ビジネスじゃない方法で映画を観られる環境をどうにかして作れないかを考えた」と話してくれました。映写機は神戸の閉鎖した映画館から譲り受け、最初は、スクリーンは布にアイロンをかけたもので代用したとも。
古川さんの情熱が色んな人を巻き込んで可能な状況へと変化させていったことが、前半のトークから知ることができました。


後半はグループワーク。



グループワークでは、須賀川市内や市民交流センターの近辺には映画館がない状況から、今持ってる課題とその改善点(アイディア)を考えました。

課題には、交通の便や立地のほか、映画を伝える内容や告知手段の工夫が必要との声も。また娯楽が映画だけではなく、インターネットの利用によって興味の幅が出てきたという現実もあるという意見も出ました。また駅前に活気がないから人が来ないと言う根本的な意見については、ゲストの古川さんから「駅前に人がいないのは白河も同じ。それで映画館がなくなってしまったと思う。でも成り立たないからなくてもいいと言うのは嫌だから僕はやり続けている。今度新しくできる市民交流センターも、少し前までは誰もできるなんて思わなかったと思う。でも素晴らしい機会があった。最初にできる理由、できない理由ってどこの地方都市も同じ。月に一回上映するって決めたら、沢山ある映画作品の中から光り輝く1本をどんな内容で選ぶのかも面白いし、どう知らせるのかを考えるのも大事だと思う」とアドバイスも。

アイディアには、須賀川で開催されている「すかがわ国際短編映画祭」と連動した映画の企画や、世代ごとに興味ある映画は違うため上映時間を分けたり、一箇所だけでなく二箇所で上映できる環境を作るなどの案や、学生が作る映画を上映する提案も。また街中にある空き家を利用して街中の活性化を目指すなど、市民交流センターの中だけに留まらないアイディアも沢山出ました。