2018.12.11
ワークショップレポート7.18「オトコトバヅクリ」 ─ "音"と"言葉"でつくり出す場 ─
「一緒につくる、考える」ワークショップレポート
かえりたくなる街のつくり方vol.04?
オトコトバヅクリ ?"音"と"言葉"でつくり出す場?
新しくできる市民交流センターには、音楽や演劇ができるホールや、楽器が演奏できるスタジオ、ダンスや、ものづくりをするアトリエ、キッチンスタジオ、写真や絵が好きなひとは自分の作品を展示することができる場所があります。学校以外の場所でも、好きなことに熱中したり、友だちと一緒に活動する場があります。これからたくさんの活動をし経験を重ねていく須賀川の若者ものたちに、市民交流センターを知ってもらい沢山利用してもらいたいと考え、今回のワークショップでは、中学生と高校生を対象に募集をかけました。
ゲストは、児童演劇を中心に世界各地で舞台演出を行い、時には自身も舞台に立つ大谷賢治郎さんと、ミュージシャンのプロデュースや映画音楽、絵本の制作など様々な分野で活動している音楽家の青柳拓次さんをゲストに迎え、プロの演出家と音楽家と一緒に、自分の中にある言葉と音をつかって詩をつくり、みんなでひとつの作品をつくりあげるワークショップの始まりです。
前半は、大谷さんのかけ声に合わせながら会場全体を参加者全員が自由に歩きまわり、身体の緊張をほぐしていきます。自由に歩きながら、自分以外の二人を意識して三人で三角形の状態をつくるようにして歩くなど、自分の身体の感覚を研ぎすまし、自分と相手の距離を調整していきます。身体を動かしていくとみんなの表情に笑顔が出てきました。身体と心の関係って本当に不思議です。次は言葉の遊び。言語行為論といって、言葉がもつ「音」と言葉の「意味」の両方を様々なコミュニケーションのシーンにおいて考えて使っていくワークです。出されたお題は、「ありがとう」と相手に言いながら、「行かないで」という気持ちを相手に伝えること。「ありがとう」の言葉からその気持ちが伝わったと感じた相手は一歩下がります。これは難しい。「本気で言ったら悲しくなっちゃう」との声も。
音楽家青柳さんによる「オト」のワーク。私たちスタッフや市の職員の方々も全員、参加者の高校生たちの中に入って、みんなで手を繋ぎ大きな輪をつくります。目をつむって、最初は声にならないくらい小さな声で、少しづつ、だんだんと、大きな声を出していきます。声を出す自分の胸の振動と相手の振動が?いでいる手から伝わってきます。みんなの声が渦を巻いて天井に登っていくような不思議な感覚。
それから3パートに分かれて、スキャットという世界中の部族や民衆特有の意味をもたない詞をメロディに、身体でリズムをとりながら繰り返し歌い、みんなの声を重ねていきました。意味をもたない言葉を繰り返し歌い続けていると、「私」という個人から「オト」が前に出ていき、みんなの「オト」になっていく感じ。個人が消えて誰のものではない「オト」になる感覚といったらよいのでしょうか。ポジティブで優しい気持ちに包まれる時間でした。
オトとコトバのワーク:みんなで詩をつくろう
テーマは「あの日」。「あの日」と言われて思い浮かんだ、「風景」「色」「音」を手元に配られたカードに書きます。書かれた紙は一度集められシャッフルされて、再び配られました。手元には、自分ではない誰かの「あの日」の「風景」、「色」、「音」で詩をつくるワーク。
最後は、青柳さんのギターとスキャットのメロディーをみんなの歌声にのせて、参加者25人の「あの日」を朗読しました。誰かの「あの日」が、みんなの「あの日」に変っていく体験。
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「みんなひとりひとりが書いたあの日を全部ばらばらにして、みんなが自分の文章で書いたそこに、ひとりだけじゃない、ほかのひとの気持ちも入っていたのが感慨深かった」(参加してくれた高校生の感想より)
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ワークショップの記録映像は下記サイトよりご覧いただけます(撮影:星野有樹)
25人による詩「あの日」
オト:青柳拓次・参加者全員/コトバ:大谷賢治郎・参加者全員
「あの日」
キラキラとした星空にきれいなピンク色の桜が散っていた
「あの日」
夏休みに海に行った。夕方、だいだい色に染まった海を見ていると、海岸のどうくつからゴォー...っという音は聞こえてきた
「あの日」
私たちと共にあった大好きな青色の海は沢山のものをガッシャンと音をたてて壊していった。
「あの日」
きりがかかった湖を不安の色がそめた時、背後の森がざわざわと音を立てた。
「あの日」
大地震が起き、物やガラスがガタガタになり水色にのまれていった。
「あの日」
夜の海、空には灰色の雲、さざなみと虫の声だけが聞こえる。
「あの日」
「静かだ」「なんて静かなんだ」「暗くて何もきこえない」あるとすれば、「サー」という頭の中の音、窓の外は遠くまで青一色の中に雪がまう。これは世界が終わりをつげた、ふぶきのなのかもしれない。僕は静かに目をとじだ。
「あの日」
あの日、ゴゴゴゴゴゴと音がしたと思ったら、周りはがれきや海水そして私は得体の知れないものに包まれていた。夕日がオレンジにそれをてらして、目の中にピンクの線香が走った。これが世界の終わりだ。
「あの日」
あの日、ザザザザとなまり色の海が僕の前に迫ってきた。僕はその重たい海から逃れるように子供と自転車に乗った。そして家に帰った。
「あの日」
「入学式」と書かれた看板の横で君はうれしそうにクルクルとはねた。今の私にはないすんだオレンジの瞳をした君。
「あの日」
水族館で開かれたショー。野外で行われたそのショーはセミのミーンミーンという音。人の声、青く透き通った水の音で会場を包んだ。
「あの日」
5年前しんしんとしたふいんきの中で岩瀬支所の窓から見えた一面のひまわり畑とみずいろ(青)の空がすごーくきれいですがすはしかったなあ?。
「あの日」
ザザザと青い波が高くうちよせ、白い雲は小さく浮かんでいた。
「あの日」
静寂の中に立つ発声の音が青く光る畑の中に響いた。
「あの日」
ゆうやけの色が真っ赤できれいだった日の、夜の星空は寒天の星がかがやき、森のむこうからミーンミンミン
ミーンミンミンとせみの声。まだまだ夏はまっただ中だ。
「あの日」
いつもと変わらない海だった大きな地震のあとに黒い波が押し寄せてきた。心臓の音がドキドキした。あの恐ろしい日は忘れない。
「あの日」
夏の空は、今まですみきっていたのに、突然、空が灰色に変わり、ザーザーと雨が降ってきた。
「あの日」
海と島の見える海岸。天気は晴れ。空は青く晴れわたる。子どもがちゃぷちゃぷ泳ぐ夏の日。
「あの日」
まわりの女子がザワザしている。夜の体育館で練習しているあいつ。なぜかあいつの汗は銀色に輝いて見えた。
「あの日」
夜の高速道路。車の流れが「しゅー」と続く中、トンネルの「照明灯のオレンジ色」を抜けた先に海の夕日が拡がる、あの日。
「あの日」
深い青色の空の下、中学校の校庭でリレーをして、ザザザッズサーと転ぶ音がした。
「あの日」
君と公園で遊んだ日。だいだい色になるまで親の迎えがくるまで楽しんだ。2人をそっと包むようにさらさらと風が吹いた。
「あの日」
ぼくは、しゃくねつのグラウンドにひとりでいた。そう、高雄日本人学校のグラウンド。しゃく熱、熱い、「ぐわっ...」ひとりさけんでいた。そこはしゃく熱の台湾。真っ赤な高雄日本人学校。
「あの日」
浜辺に向かってサクサクという砂を踏む足音をたてて歩いていた。海はサーっと音を立て振り返ると、空色だと思っていたが気付いたらオレンジ色のゆう日にかわっていた。
撮影:星野有樹