現在、ミュージアムは休館中のため、1Fエレベーター脇に3月のおすすめ本コーナーを設置しました。

怪獣やメカの模型、グラフィックを展示している「空想アトリエ」。
このコーナーでは、「空想生物学」「空想機械学」「特撮天文学」「特撮映像学」「特撮世界と環境学」の6つの架空の学問を設け、それぞれのテーマに合わせた展示をしています。
展示棚は書架にもなっており、展示に合わせた本を配しています。

3月は、その6つの学問のうち「特撮映像学」から、おすすめの本をご紹介します。

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「特撮映像学」は、構図や美術、編集など様々な技法を駆使して、空想世界のことをあたかも現実のように見せる工夫や努力、また、英二監督が作り上げてきた特撮映像作品の魅力について紹介しています。

ところで、当たり前のように『特撮』という言葉を用いていますが、そもそも、『特撮』とはなんでしょうか。

広辞苑第7版には、次のように記載されています。
特撮...特殊撮影の略。
特殊撮影...映画・テレビで、ミニチュア撮影、高速度・微速度撮影、スクリーン・プロセス、二重露出、電子画像処理などを駆使して、現実にはない情景を作り出すこと。古くはトリック撮影とも呼んだ。特撮。

つまり、「町に怪獣が現れてヒーローと対決する」シーンや、「火災が発生し、ビルが燃え上がる」シーン、「嵐に見舞われ、遭難しそうになる」シーンなど、実際のスケールで再現し、撮影することが不可能な「ありえない」ことを、本当の出来事のように画面上で表現する手段、技術が『特撮』です。

例えば、怪獣の巨大感を表現するためにカメラと怪獣の間にミニチュアを配置したり、その合間から怪獣がのぞき込んだりすることで、目撃者目線の映像が出来上がります。ミニチュアや怪獣の造形の素晴らしさだけではなく、構図やカメラワーク、照明、編集の妙技によって生み出される特撮映像の世界に注目してみてください。

「特撮映像学」の書架には、特撮関連の本はもちろん、様々な映像作品について、撮影、音楽、編集など専門的な本やトリック絵本、特撮作品のDVDも配しています。
今回おすすめするのは、「十二世紀のアニメーション」「手塚治虫映画エッセイ集成」「光の本」「きょうのおやつは」「視覚ミステリーえほん」「オール東宝怪獣大図鑑」の全部で6冊です。現在、休館中ですが、こちらの6冊は貸し出すことができます。(蔵書検索・予約はこちらから

最後に、『特撮』の黎明期を支え、礎を築いた英二監督。その技術や工夫は現在も受け継がれていますが、昨今のCG技術の発達、コストダウンによって、大規模なミニチュアセットを用いる特撮作品は少なくなりました。同時に、これまで保管されていた特撮ミニチュアや、美術資料など、貴重な資料が不必要なものと捉えられ、劣化し、破棄され、または行方がわからなくなるなど、危機的状況に陥っています。
現在、『特撮』を文化として後世に伝え、受け継いでいく動きが進んでおり、2018年には特撮文化推進事業実行委員会(外部リンク)が設立され、翌年2019年には7月7日を「特撮の日」に登録(外部リンク)し、昨年2020年11月、須賀川特撮アーカイブセンター(外部リンク)が開館しました。

今回のおすすめ本コーナーを通じて、『特撮』の魅力を知っていただくとともに、作り手側から見た『特撮作品』と『特撮の技術』について興味を持っていただけたら幸いです。

特撮の技術に関して、ミュージアムの動画企画としてYouTubeで配信も行っています。(tette動画内 円谷英二ミュージアム「特撮の技術」リンク)こちらも併せてご覧ください。